お迎え顛末記

牡丹〜予期せぬ来訪者〜


その時私には暇があり、そして小金を持っていた。
小人閑居して……
まさにことわざは正しい。
不善とは言わぬ。
しかし、それは少々暴走しすぎ……。


なんとなく、なんとなく。
アフターの朝、私は里に並んでいた。
休みが合わなかったり、合っても早朝から行動するなんて、
あまり私にはありえないことだ。
でもその日その時、私は里にいたのだ。
これがすべて。

引いた番号は112番。
どうしても、と必死になるほどお迎えしたいわけじゃなかった。
できたらしてもいい、くらいの軽い気持ちだった。
……なんでこの番号まで残ってるんだ?
しかも、私で完売って……
これはキャンセルもできはしない。

そもそも、少しでも欲しいという気持ちがなければ、
わざわざアフターなぞに並ばないわけで。
この春、私は2度ほど里に行っていた。
そうして、展示のLolinaを見ていた。
「黒の御所解きの着物、着せたいな」
お迎えしたばかりの蝶子とは違う、古典柄の似合いそうな子。
そんなことを思った。
だから潜在的にお迎えしたくて、きっとそこにいたのだ。

ところがいざ手にしてみて。
互いに困惑。
なんか、うちの子じゃないのだ。
帰宅してウィッグ換えて、アイ変えて。
手かえ品かえ試行錯誤。
「ボディはせいらに使ってもいいし、ドレスは蝶子に回すとして、
ヘッドだけオク出ししようかな……」
そんなことも考えた。
けれど翌日。
オーバーメイクしてウィッグ変えてみたら。
いきなり馴染んだ。
本人、必死だったのかもしれない。里子にやられたくなくて。

馴染んだと言っても、アニメ顔揃いの高瀬家の顔ではない。
そこで、「高瀬家の隣家」住人設定のSDめぐ、露葉の預かり子ということで決着。
蝶子の幼馴染となった。
名前はインスピレーションが降ってきたから「牡丹」。

こうして、うちの子仕様になった途端。
いきなり、先住ドールたちにガンを飛ばす。
「わたしはね、わたしはね!」
ちょっと待て!
なんでそんなに自己主張が強いんだ、おまえは!
Lolinaにはきつめのメイクの子と、やわらかメイクの子がいるらしいが、
うちにいるのは間違いなく前者。
牡丹専用の着物を縫うまで、
その瞳は熾烈な光を消すことがなかった。

口が達者で、ぷっくりほっぺが少々コンプレックス
(そこが可愛いんだが)な
愛すべきオピニオンリーダーの誕生であった……。